「教えてあげる。隠し手があるのは、お前達だけではないということをな!」

真由のその言葉を聞いて、

「いけない!」

ふっ飛ばされていた理沙が、慌てて襲いかかった。

「女神の力を見せてやる!」

両手を広げた真由の魔力が、一気に上がった。

蝙蝠の羽が生え、赤く光る瞳と鋭い牙が、口許から覗かれた。

「きゃ!」

生えた羽に、理沙は叩き落とされた。

「ここからが…恐怖の始まりよ」

一気に数倍に膨れ上がった魔力に、空気が震え、空間が一瞬歪んだ。

「女神の解放状態…」

何とか立ち上がった理沙は、真由の姿に目を細めた。

「そうよ。あなたが、捨てた姿でもあるのよ。月の女神…イオナよ」

真由は振り返り、理沙に笑いかけた。

それだけで、理沙の額に冷や汗が流れた。

「数秒よ」

真由は笑った。 そして、視線を前にいる九鬼に向けた。

「数秒で、殺してあげる」

「く!」

九鬼は構えた。


「な、何なのよ」

その時、戦場についた緑は、絶望していた。詳しい状況がわからなくても、真由の圧倒的な魔力は理解できた。 その為に、足がすくんで動けなくなっていた。

「何秒がいい?60秒まで、選ばしてあげるわよ」

無闇に動けなくなった2人に向かって、真由は微笑んだ。

「いいわ。好きな秒数でかかってきなさい。一発は、プレゼントしてあげる」

「く、くそ」

九鬼は、攻撃を躊躇った。カウンターならば、少しはダメージを与えることができるかもしれなかった。

しかし、こちらから仕掛ければ…次の瞬間、死が待っていた。

「数えるわよ。い」

ゆっくりと余裕を持って数え出した真由に、突進してくる影があった。 一気に森の向こうから、光のような速さで、襲いかかってくる影は、光輝いていた。

「高坂ダイヤモンドパンチ!」

「な」

唖然とする真由の頬に、ダイヤモンドの拳が突き刺さっていた。

「数秒もいるか!思った瞬間が、やるべき時だ!」

高坂の渾身のパンチは、突進力も加わって、普通よりも威力を増していた。