(やめろ!)

真由に噛みつく己の姿を、第三者のように心の中で見た輝の叫びは、どこにも届かなかった。

「ガルル…」

犬のような声を聞き、真由は笑った。

「今さらかよ」

輝の後頭部を掴むと、強引に離そうとするが、深く刺さった牙が抵抗した。

「なめるな!」

それでも力任せに、強引に離すと、輝を後方に向けて投げ捨てた。

首筋の肉が抉れたが、すぐに細胞が増殖し、傷口を再生すると、さらに皮膚が硬化し、全身を覆った。

「これで、あたしに死角はない」

ゆっくりと輝に向かって、歩き出す。

投げられても、四つ足の格好で地面に着地した輝は、食い千切った肉を捨てると、近付いてくる真由を睨んだ。

そんな輝のそばに来ると、真由は目を細めた。

「人間を捨てたと思ったら…今度は、単なる獣に成り下がったか…。浅はかな」

と言いながら、真由の指が動いた。

その動きを、輝は見逃さなかった。横にジャンプすると、攻撃を避けた。

見えない空気の槍が、輝のいた場所に突き刺さっていた。

「チッ」

軽く舌打ちした真由が両手を広げ、竜巻を発生させようとした瞬間、

「させない」

理沙が、真由の前に瞬間移動してきた。そして、指を合わせて、真由の動きを止めた。

「貴様!まだ動けたのか!」

力比べの体勢になる2人。

理沙はフッと笑い、

「あんたが、指先で風を操っているのはわかっている!」

思い切り力を込めた。

「プラチナボンバー!」

「な、何!?」

真由の両手が押され、足の踵が地面を抉った。

「力は、あたしの方が上のようね」

「な、なめるな!」

真由の目が光ると同時に、彼女の全身も発光した。

「きゃあ!」

悲鳴を上げて、思わず手を離した理沙。

「電流か!」

何とか立ち上がった打田は、冷静に真由の攻撃を分析していた。

「あたしは、空の女神!」

真由が吠えると、理沙の足元に竜巻が発生した。