それに、高坂にはその魔物に面識があった。

二年前、校長が送った軍隊に襲いかかっていた魔物の一匹だ。

「上級魔物…。ここは西部か」

高坂の前に、立つ魔物の数は20。

「に、逃げろ…高坂」

後ろから、苦しそうなさやかの声が聞こえてきた。

「さやか!?」

振り返った高坂は、絶句した。

膝を抱えて、踞るさやかがいたからだ。

どうやら、タックルの体勢で魔法陣から飛び出した為に、足を挫いたらしい。

「さやか…」

「逃げろ…。あたしが囮になる。その間に逃げ…」

「馬鹿いうな」

高坂は先程奪ったブラックカードを、さやかに投げた。

「これで、回復させろ。カードを直接患部に当てて発動させれば、無効化にはできないだろう」

高坂はそう言うと、魔物達と向き直った。

「あ、あたしが治っても…あの数じゃ…」

普段と違い、弱気なさやかに、高坂はフッと笑った。

「心配するな」

妙に余裕のある高坂に、さやかは叫んだ。

「いつもの強がりで、何とかなる相手じゃない!お前の体は、戦いには向いていない!やめろ!」

「…確かに、俺は弱い!だからと言って、それが戦わない理由にはならない」

魔物達は涎を流しながら、近付いてくる高坂を見つめていた。

「馬鹿野郎!あ、あたしの前で!死ぬな!」

さやかの目から、涙が流れた。

「さやか…」

高坂は歩きながら、制服の内ポケットから、あるものを取り出した。

「俺は…確かに弱い!だけどな!守るべき者に必要なのは、強さではない勇気だ!」

そして、高坂はそれを突きだした。

「それに、戦う術は手に入れた!」

「そ、それは!」

さやかは思わず、目を見開いた。

「装着!」

高坂の体を、ダイヤモンドの輝きが包む。

「お、乙女ダイヤモンド!?」

さやかの言葉を、高坂は否定した。

「違う!高坂ダイヤモンドだ!」

拳を握り締め、高坂は走り出した。

「くらえ!高坂ダイヤモンドアタック!」

そのまま、魔物の群れに突進した。