しかし、いつもの高坂と違い、さやかが振り払うことができないくらいに力が強く、カードを向けることができない。

「森田部長は、死ぬ寸前まで!俺の部長だった。非力な俺の為に、あの人は引き受けたんだ!あの…」

高坂は、さやかの腕を上に上げると、後ろを見た。

凍り付けの森田の体に、巻き付いている金属のような物体。

「王(オウ)パーツを!」

そして、高坂はその金属の物体を睨み付けた。

「だからこそ!お兄ちゃんの意志を無駄にしない為に!海へと!」

さやかは何とか抵抗しょうとするが、びくともしない。

高坂はもう片方の手で、さやかからカードを奪い取った。

「高坂!」

さやかから手を離すと、2人は睨み合う。

「森田部長の遺体は、ここに埋める!そして、オウパーツは…」

高坂は素早い動きで、さやかに背を向けると、走り出した。

「俺が、何とかする!」

「馬鹿!」

さやかも走り出した。

「こんなことをして、お兄ちゃんが喜びとでも思うのか!」

「俺は、情報倶楽部の部長だ!森田部長の意志を継ぐ!」

「馬鹿野郎!」

さやかは、高坂の足に向かって飛びかかった。

「部長!今こそ俺が!」

氷の塊まで、数センチとなった時突然、2人の前に魔法陣が現れた。

「ト、トラップだと!?」

高坂は唖然とした。止まろうにも、勢いがついていた。

「だ、誰が!?」

と思った時、高坂の頭に悪戯ぽく笑っている幾多流の顔が浮かんだ。

「お、お前か!」

高坂とさやかは、魔法陣に飛び込み、そのまま…結界外に、強制的に出された。


「きゃ!」

「うわあ!」

島のどこかまで、強制的にテレポートさせられた高坂とさやか。

走っている勢いのまま、地面に転がった。

「こ、ここはどこだ!」

急いで立ち上がった高坂は、周りの風景から島の位置を確認しょうとした。

しかし、そんな確認はいらなかった。

「…なるほどな」

高坂の目の前に、毛むくじゃらの大男がいた。勿論人間ではない。目が一つだからだ。