「!」

小屋の中で独り、膝を抱えていた浩也は顔を上げた。

「人が…死んでいく」

浩也の脳裏に、焼け野原になった土地が浮かぶ。

灰になる老婆と…微笑む女の人。

浩也は頭を抱え、

「また…大勢の人が死ぬのか」

身を震わせた。




「な、何だ?」

同じ異変に気付いたのは、高坂だった。

浩也達が泊まっている小屋と同タイプの場所にいた高坂は、輝達が寝静まったのを確認すると、小屋から出て地面に降り立っていた。

真夜中だというのに、合宿所の方が明るいことに気付いていた。

周りが静まり返っている為に、遠くの爆発音が聞こえて来た。

「まだ…戦っているのか?」

高坂は、半分呆れてしまった。

少しは戦いの状況が気になったが、見に行く暇はなかった。

高坂にはやることがあったのだ。

こんな夜中に、わざわざ1人でジャングル内を歩くのは、自殺行為であるが…それでも行かなければならなかったのだ。

(あいつらを巻き込む訳にはいかない)

高坂は、西部にある最大の広さを誇る休憩所を目指すつもりだった。

「いくか」

危険ではあるが、恐れてはいなかった。

前回来た時も、真っ暗な島内を探索した。確かに、あの時は、さやかと2人だったが…。

(恐れることはない)

高坂は、学生服の上着の内ポケットに手を置いた。

そして、深呼吸をすると、助走もつけずに、一気に走り出した。

落ちた枝や草を踏む音も、遠くからの爆音に打ち消されているように感じていた。

(あの場所だけは、覚えている!忘れられるか!)

高坂は、前方の闇を睨んでいた。



(何だ!これは!)

二年前、瀕死の状態だった森田を発見した高坂とさやかは、ボロボロになりながらも、彼が守っているものに気付いた。

それは、世界を揺るがす程の恐ろしいものだった。

それを目の前にして、ただ怯えるだけだった高坂に気付き、瀕死の森田が何とか絞り出すように、言葉を発した。

「そ、そ、それを…俺に」