崩れるように倒れた司令官の真横で、膝を突きだした体勢の絵里香が立っていた。

その後ろでは、2人の忍者が倒れていた。

突然の出来事に、数秒だけ唖然となった忍者達は直ぐ様、小太刀を抜き構えた。

「退け」

しかし、怯むことなく周りを威嚇した絵里香の眼力に、忍者達は構えたまま動けなくなった。

退くことはなかったが、固まった忍者達の間を、絵里香はすり抜けた。

「舐めるなよ!あたしの生徒達がそう簡単に死ぬかよ」

絵里香は、合宿所へと走った。

そうこうしている間に、忍者の先陣は強引に結界を越えた。勿論、戦車も。

しかし、結界に入った瞬間、爆音が轟き…戦車は木っ端微塵になった。

「ヒイイ!」

パニックになった忍者達がマシンガンを構え、前方に向かって引き金を引いた。

「も、森を焼け!」

火炎放射器の先端から出た炎は、森の中から吹いてきた強風に押し返され、発射した忍者達を火だるまにした。

さらに、木っ端微塵になった戦車から飛び散ったガソリンに火がつき、地面が燃えた。

「敵は森の中か!」

ガトリング砲を森の中にぶっ放つが、木々が邪魔した。

木の表面を抉った弾は、跳ね返り、一部の忍者に被弾した。

「撃ち方やめろ!」

忍者の1人が、ガトリング砲をぶっ放つ忍者に叫んだ。

しかし、その命令を聞くことはできなかった。

辺り構わず撃ちまくる忍者は、首から上がなかったのだ。

「どうなって…」

周囲を確認しょうと、首を回した忍者の頬に風が当たったと、脳が皮膚からの信号を受け取る前に、頭がスライスした。

「うわああ!」
「うぎゃああ!」

結界から、森までの数メートルが、阿鼻叫喚の地獄に変わる。

「かまいちか…」

手首を切り落とされた忍者は、片膝を地面につけながら、森の中からゆっくりと歩いてくる女に目を細めた。

炎が強くなり、燃え上がっている為に、蜃気楼が発生して、女の姿が揺らめいていた。