「やはり中止にする!夜が明けたら、全生徒に告げる!」

食堂にいながら、まったく食事を取っていなかった絵里香は、苛立ちと心配が頂点に達した。

「支援者達には、あたしが直接謝りに行く」

と言った絵里香を見て、リンネは心の中で笑った。

「くそ!」

食堂から結界内に入ろうとする絵里香の背中に、リンネが声をかけた。

「前田先生。夜は危険ですわ」

「な、何を悠長なことを!」

絵里香は足を止めて振り返ると、睨むようにリンネを見た。

(だって〜手遅れだから)

心の中でそう思いながらも、リンネは真剣な表情をつくり、絵里香を見ると、

「それに、どうやら…隠密部隊も全滅したようですよ」

視線を床に落とした。

「な!」

絶句した絵里香は、リンネに訊いた。

「どうして、それを!?」

「そ、それは…」

リンネはあくまでも落ち込んでいるように演じながら、勿体ぶって言葉を続けた。

「数時間前に、血だらけの人が結界を出て、埠頭から増援を呼んでいたから」

「な!」

絵里香は、リンネの話を聞くと、埠頭を目指して食堂を飛び出した。

「増援部隊に、生徒達の救出を頼まれては…」

リンネは目で絵里香を追いながら、見えなくなると小声で嘲るように言った。

「半分以上は死んでるけどね」

それからクスッと笑うと、長テーブルに頬杖をつき、結界の方に目を向けた。

「首尾はどうなっているの?」

「は!」

リンネの言葉に、結界の向こうから姿を見せたユウリとアイリが跪いた。

「我が炎の騎士団も、この島の周りに待機しております」
「いつでも、攻撃を開始できます」

2人の言葉に、リンネは頬杖をつきながら、軽く肩をすくめると、

「それじゃ〜あ、つまらないわ。あくまでも島の中の者達ですましてくれないと」

ユウリとアイリに笑いかけた。

「承知致しました」

2人が頭を下げた。

「お前達は、騎士団とともに待機しておけ。あくまでも、赤星浩一が復活した時の為だ」

リンネの言葉に、再び2人は頭を下げた。