飛び交う手裏剣。

圧倒的な戦力で、島中の魔物を皆殺しにするはずだった。

「お頭!」

自らも指揮を取りながらも、前線に出ていたお頭と言われる男は、次々に飛び込んでくる状況報告に苛立ちを覚え初めていた。

忍者である彼らに有利なはずの森の中での戦争は、人間ではないもの相手では、話が違った。

まだ湖にも到着がしないどころか…百人いた戦闘員が八十に減っていたのも、お頭と言われた男を焦らせた。

「まだ…島の入口だぞ!ここは!」

その苛立ちが、焦りに変わる瞬間が来た。

森に隠れるはずが、逆に隠れられ…予想もつかない方向からの攻撃を受けながらも、魔物を倒していると、お頭の耳に信じられない報告が飛び込んできた。

「学生と思われる死体を多数確認!」

「な、何!?」

お頭の眉がはね上がった。

依頼者から、学生は生還させるように言われていたのだ。

そうでなくても、この島は危険であると、どこからか…噂が立ち初めていた。

だからこそ、お頭は計画の変更を告げた。

「島を焼くぞ!生徒達の弔い合戦だ!」

「は!」

予定の一つに入っていたとはいえ、火をつけるのは早すぎた。

生き残っている生徒達もいるはずなのに…それがわかっているのに、すべてを燃やすことを決めたのだ。 何故ならば…皆殺しに合った方が、都合がよくなったからだ。駆けつけた時には間に合わず…その惨劇を目にして、森を焼き、魔物を全滅させた。それにより、島は安全になったと堂々といえるからだ。

忍者の数人が、火のついた松明を持ち、散り散りになると、森を焼くはずだった。

しかし、火は森中を駆け巡る風に消された。

「な」

絶句した忍者の1人が、松明を確認しょうと、顔を横に向けた瞬間、彼の首が飛んだ。

「やはり…人間は醜い。すべて殺すべきなのよ」


忍者の首を切り取り、風を起こしたのは、真由だった。

「人間…なんて」

真由は、周囲の人間を殺した後、お頭の方に走り出した。

「が、学生!?」

お頭は、真由の姿に唖然とした。

「どうして…」

それ以上に驚いたのは、彼女から感じる強烈な血の匂いだった。