「人が言う…運命ってものはあるのか?」

眼鏡を人差し指で押さえながら森の中を歩く刈谷の前に、ユウリとアイリが突然姿を見せた。

「…」

2人の姿を見て、無言になると、刈谷はゆっくりと頭を下げた。

「女神ソラと接触したようだな」

アイリの言葉に、刈谷は頭を下げたまま答えた。

「は。女神は目的通り、人間のもとへ」

「有無」

アイリは頷くと、ソラが向かった方に顔を向けながら、隣に立つユウリに話しかけた。

「それにしても、あのようなポンコツの女神を今なら、復活させるなど…リンネ様は、何を考えていらっしゃるのか…」

ため息混じりで、言葉を続けたアイリの横で無言で立つユウリはただ、刈谷を見つめていた。

そんなユウリの視線を知ってか知らずか…刈谷は頭を下げながら、口を開いた。

「恐れながら…。リンネ様は思量深いお方。あの方のお考えは、我々には想像もつかないことでございます」

「な」

その言葉に絶句したアイリは、唇を噛み締めた後、

「お前は、あたし達が何もわからないとでも言いたいのか」

少し怒りを露にした。

「いえ…。滅相もございません」

刈谷は頭を下げたままだ。

「き、貴様!」

キレたアイリが前に出ようとしたのを、ユウリが腕を横に突きだして止めた。

「ユウリ…」

驚いたユウリの横顔を見たアイリ。しかし、ユウリは刈谷を見据えたまま、

「まるで…自分1人がわかっているような言い草だな?この人間かぶれが」

凄まじい殺気を放った。

しかし、そんな殺気もまったく気にすることなく、頭を上げた刈谷は凛とした表情で一言だけ述べた。

「恐れ入ります」

そして、すぐに頭を下げた刈谷の言葉に、ユウリはこれ以上絡む気がなくなった。

「何だと!?」

逆に頭に来たアイリの体が、炎の如く揺らめいた。

「行くぞ」

そんなアイリを無視するように、ユウリは後ろを向くと、歩き出した。

「え!」

あまりにもあっさりとした身の引きように、アイリが拍子抜けしてしまった。

怒りも消えて、刈谷とユウリの背中を交互に見た後、舌打ちすると、ユウリの方へ走り出した。