すると、小屋の外壁を淡い光が覆った。

「校章って、こんな役目があったんですね」

驚いたように、さやかの横から覗き込む緑は、感嘆の声を上げた。台の真ん中に空いてる穴は、校章がぴったりと挟まる形になっていた。

「まあな」

さやかは少し疲れたように答えると、左右に伸びる小屋の内装を見て、

「どちらの通路も歩けば扉がある。右側を女子…左側を赤星君が使ってくれ」

そう言った後、

「それから、ここと反対側にも同じような空間がある。それぞれ、そこに見張りをおきたい」

4人を交互に見た。

「あたしが、やりましょう」

九鬼が即答した。

「じゃあ、生徒会長はここを見張ってくれ。反対側は、あたしがつく。各自食事を取った後は、交代してくれ。ああ…確か、シャワーもあったはずだ。雨水を濾過しているから、綺麗だと思う」

さやかの説明を受けた後、九鬼を残し、緑とカレンは通路を歩きだした。

「浩也!」

まだ落ち込んでいる浩也に、途中で足を止めたカレンは声をかけた。

「少し休め」

「あ、ありがとう…」

浩也は頷くと、カレン達と反対方向へ歩きだした。

木を囲むように廊下が伸びている為に、すぐに浩也の背中は見えなくなった。

そんな背中を、カレンと九鬼が見送っていた。

カレンは見えなくなると、前を向いたが、九鬼はしばらく横目でいなくなった方向を見つめていた。

「…」

心配ではあるが、気にしている暇はなかった。

先程体験した圧倒的な力の差に、九鬼は絶望を感じるよりも、どうすべきかを考えなければならなかった。

勝てないとわかりながらも、戦うことは当然である。しかし、そんな状況の中でも、今の自分ができる最良のことを考え、それ以上のことを実戦しなければならない。

九鬼はゆっくりと、目を閉じると…頭の中でイメージトレーニングを開始した。