そして、その近くまで、さやか達が来ていたことに、高坂達は気付かなかった。

彼女達もほぼ同じ理由で、宿を取ることにした。

高坂達がいた休憩所の目印だった巨木よりも、さらに太い木を見つけると、さやかは天を見上げ、枝に隠された丸太の建造物を見つけた。

「上がるぞ」

さやかは木に張り付いて上に登ろうとしたが、スカートであることを思いだし、浩也を見た。

しかし、顔を伏せて放心状態であることを確認すると、迷わずに木に飛び付いた。

「上で着替えるか」

合宿所で、慌てていた為に着替えるのを忘れていた。

どんな格好でも許されていたが、さすがに制服は戦い難い。

九鬼のように、変身できたらいいが…と思い、考えを改めた。

(乙女ソルジャーもスカートだったな)

さやかが登ると、緑が続いた。

周りに気を向けていた九鬼に、浩也のそばにいるカレンが言った。

「先に登ってくれ」

その言葉に九鬼は頷くと、木を登りだした。

さすがは、九鬼である。あっという間に、木の上にある丸太小屋まで、登りきった。勿論、さやかと緑も着いていた。

「浩也…。あたしの背中に乗るか?」

カレンは小屋の下にある扉を見つめながら、浩也1人を背負っても余裕でいけることを確認した。

「…大丈夫だよ」

上を見上げているカレンの耳に、囁くような浩也の声が聞こえたと思った瞬間、扉に飛び込む浩也の姿が、目に映った。

「あ、あの野郎!」

人間離れの跳躍力を見せた浩也に、カレンは顔をしかめた。

能力を隠すことを忘れている。

「馬鹿が!」

カレンは苦虫を噛み潰したような顔をすると、木に向かってジャンプした。角度を計算して、木の表面を蹴ると、そのまま扉の中に飛び込んだ。

「よし!」

カレンが中に入ったのを確認すると、さやかは自分の制服につけていた校章を外し、木の周りを囲むようにドーナツ状に設置された小屋の扉のそばにある枝を切り裂いて作った台に、それを差し込んだ。