「平和主義者は何か!それは、争いに関わらずに!安全な場所から平和を唱え、決して自らの手を汚すことはない者達のことだ!だって、争いが嫌いだからね」

刈谷は、肩をすくめた。

「遠くの争いを眺めるだけだ。参加することは、我々の考えに反する」

「争いはいけないことです」

百合花は頷いた。

「だけど…戦ってくれた人には、こう言おう!ありがとうと!」

「そうです。感謝の言葉です。愛です」

人は、ずる賢く…愚かである。

しかし、それに他人への感謝をそえれば…それだけで、許されるような気がした。

もし…間違っていれば、謝り…懺悔すればいいのだ。

「戦いは、絶対駄目です。例え、魔物であっても!生きているものを傷付けたり、殺してはいけないのです!」

百合花は、周りの緑を見て頷くと、両手を広げた。

「だって、世界はこんなにも美しいのに」

確かに、世界は美しい。

しかし、その漠然とした全体像である美しさだけを語る者にはわからない。

目にできるそこまで木々が育ち、花が咲くまでの苦労を。

そして、なぜ…葉が天を向くのか。

なぜ、花が咲くのか。

そして、動物はなぜ…生きていけるのか。

無意味な争いはいけない。しかし、生きるということはある意味戦いである。

食べるということもだ。

安全に…人間だけが、安全に生きれる権利がある訳ではない。

感謝とは、犠牲者や戦ってくれるものにするだけではない。

無事に過ごすことができたことにこそ…感謝しなければならない。

世界の中で、己が生きていられるのは…単に幸運なだけである。

平和である保証も、生きることの権利も…平等であることも、当然のものではない。

なぜならば、君達は…そうあるように自らで努力しただろうか。

今の幸せを得る為に、努力をしただろうか。


「誰?」

突然、百合花達の前に…1人の女生徒が現れた。

努力なき者から、それがなくなることは容易い。

人は、本当は…世界で一番…弱い存在だからだ。