「そ、それは…」

絵里香は口ごもった。

「下手すれば…生徒を鍛えるのは、二の次…」

今度は、リンネが腕を組み、食堂内を歩き出した。

「真の目的は…島内の魔物の殲滅。この島を売る為に」

「う!」

絵里香は、何も言えなくなった。

防衛軍の崩壊により、最大の就職先と出資者を失った学園は、経営難に陥っていた。

黒谷理事長が脳死に近い状態になり、回復が見込めない状態になったことにより、大月学園の支援者達が当面の資金を得る為に計画したことであった。

この島の近海には、海底資源が豊富であることが明らかになっていた。

「し、しかし!この島には、資源よりも守るべきものが…」

思わず口にした絵里香の言葉に、リンネはわざとらしく目を見開き、

「それは、何ですか?」

「う…い、いえ」

絵里香は口ごもった。守るべきもの…そのことは、学園側に知らされていなかった。

知っているのは、絵里香とさやか…高坂しかいない。

冷や汗を流す絵里香を見て、リンネは話題を変えた。

かわいそうからではなく、面白くなくなるからだ。

「前田先生…。生徒達の心配は入りませんわ。支援者から、応援として隠密部隊が島に向かっています」

「隠密部隊?」

絵里香は、眉を寄せた。

「幸いなことに、港の近くに…彼らの里がありましたから」

リンネの意味深な言葉に、絵里香はピンと来た。

「ま、まさか…」

「そのまさかですわ。日本地区が誇る…隠密部隊」

リンネはにやりと笑って見せてから、おもむろにその名を口にした。

「伊賀」

「伊賀…」

絵里香は唾を飲み込み、

「やはり…忍者か」

今から起こるだろう島の運命に、さっきとは違う冷や汗を流した。