「ぎええ!」

奇声を上げて、口から再び黒い炎を吐き出す加奈子。

動けない九鬼の全身を包み、炎は九鬼を焼いていく。

乙女スーツを着ているとはいえ、ドラゴンの炎を浴び続けていれば、数分で灰になるはずだ。

加奈子は、吐き出す火力を増した。



「とりゃあ!」

突然、耳元に気合いの一声が飛び込んで来たと思った瞬間、

加奈子の首の後ろに、膝が突き刺さった。

「舐めるな!」

それは、燃やされているはずの乙女ブラック…九鬼の膝蹴りだった。

「ぎゃあ!」

そのまま、悲鳴を上げる加奈子の背中に飛び付くと、手刀をつくり、二枚の羽を切り裂こうとした。

「く!」

しかし、九鬼は苦悶の表情を浮かべ、振り上げた手刀を止めた。


「相変わらずだな」

ドラゴンの姿となっていた加奈子の体が、縮んでいく。

その為、背中に張り付いていた九鬼は足場を失い、ふらついてしまった。

そんな九鬼の首に尻尾が絡みつくと、絞めながら後方に投げた。

「クソ!」

九鬼は空中で回転すると、中庭を飛び出し、首を押さえながらグラウンドに着地した。

すぐに構えようとしたが、足がもつれた。

「ほお〜」

加奈子は完全に人間体に戻ると、地面に降り立ち…九鬼の方に体を向けた。

「やはり…毒はくらっていたのか」

そして、ゆっくりと歩き出した。

「それでも、ここまで動けるとは…大した免疫力だ」

「加奈子…」

九鬼は何とか倒れないように、膝を折りながらも、立ち続けていた。

近づいてくる加奈子を睨みながら、 きいた。

「今の姿が…」

「そうだ!」

加奈子は少し距離を開けて立ち止まると、

「おれの目覚めた力だ!」

胸を張った。

「魔獣因子を持つ者の中でも、特に強力な力を発揮できると言われている!竜の因子だ!」