「うっ」

高坂は口ごもった。

そんな高坂の反応を見て、理沙は視線を少し下にした。

「月を消す訳にはいきません。もう何千年も前から、月はあそこにあるのだから…」

「…」

高坂は思わず、黙り込んでしまった。

確かに、月をなくす訳にはいかなかった。

それに、目の前の女神は、自分の力を削っても、月を創ってくれたのだ。

これ以上…何を望むというのか。

他力本願である自分を恥じた。

そんな高坂の様子に気付き、理沙は背を向けた。

「最終日まで…気を集めます。そうでもしないと、まともに戦えません」

そのまま、洞窟内から消えようとする理沙に、高坂は手を伸ばした。

「教えて下さい!ソラの目的は、何ですか!」

切なる高坂の声に、理沙は動きを止めた。だけど、振り向くことはなく、

「詳しくは知らない。恐らくは、生徒為の抹殺。だけど…紛いなりにも女神の目的が、それだけとは考えられない…!?」

そこまで言ってから、はっとした。

口許に、うっすらと笑みを浮かべると、

「そう言えば…懐かしいものの存在を感じた。この島に来てから。それこそ、何千ぶりに」

振り返り高坂を見た。

「今のあたしには、関係ないものだが…。それは、この島のどこかに封印されている。隠したのは、あなた?」

「………フッ」

理沙の問いに、高坂は笑って見せた。

「図星?」

「いえ…」

高坂は、首を横に振り、

「俺ではありません」

きっぱりと言った後、まじまじと理沙の顔を見て、

「だけど…その存在を感じることができるのですね?」

逆に聞き返した。

高坂の質問に、理沙は肩をすくめた後、

「だって〜一度だけ、それを身に付けたお父様を見たことがあるから…」

目を細めた。

「あたしの姉と…揉めている時に」

「み、身に付ける!?あ、あなたのお父様に、姉!?」

高坂は、今日一番の衝撃を受けた。

「あら〜知らなかったの?あれが、何か…」

高坂の反応を見て、理沙は少し驚いた。