高坂が食堂に戻ると、さやか達のパーティーが出発するところだった。

「あたし達は、左側のルートから行く」

さやかは、食堂の奥にある扉の前に立ち、部屋に入ってきた高坂に言った。

もう九鬼や緑達は、結界内に入ったようだ。

「わかった。我々は、右のルートを行こう!どうせ、どのルートも一旦は、湖に通じているからな」

高坂は頷いた。

「じゃあ…気を付けてね」

「お前達もな」

高坂に頷きかけると、さやかは扉を開き、中に飛び込んだ。

扉が閉まった後も、数秒だけ見つめてしまった高坂に、食堂内で苛立っていた十六が、テーブルを叩きながら、叫んだ。

「遅い!」

「まあ〜急いでも仕方ないけどな」

打田直美は、肩をすくめながら、地下から運んできた食料が入った革袋に目をやり、

「一応、綾瀬さんと相談して、3日分の食料が入ったのにしたけど…一週間分は重くって」

リーダーとなる高坂に言った。

戦うことを前提とした場合、両手両足が使えた方がいい。

高坂は革袋を見て、

「手に持つよりも、背負った方がいいな。梅!」

合宿所のどこかにいる梅を呼んだ。

「はい。高坂様」

「いっ!」

突然、高坂の目の前に現れた梅に、輝達が驚いた。

「すまないが…リックサックはあるかな?」

高坂の言葉に、梅は頭を下げると、

「少々お待ち下さい」

再び目の前から消えたと思ったら、数秒後…五つのリックサックを持って、食堂に現れた。

「助かるよ」

高坂は、梅からリックサックを受け取ると、革袋をそのまま中に入れた。

全員のリックにも入れると、高坂は他の四人に言った。

「じゃあ、出発するぞ!くれぐれも、このパーティーから離れないように!一番大事なのは、戦うよりも…一週間無事でいることということを、忘れないように!」

「はい」

と、十六を除く三人が頷いた。

「はい!」

そっぽを向いていた十六の口から、舞の声がした。

「おはようございます…」

どうやら、今まで寝ていたようだ。