「そうだ!それでいい」

加奈子は空を見上げながら、両手を開いた。

すると、加奈子は人間の姿に戻り、無防備に胸をさらした。

「!!」

蹴りで落下してくる九鬼は、学生服姿になった加奈子を見て、動揺した。

(加奈子!)

脳裏に、実世界での加奈子と過ごした日々がよみがえる。

さらに、こちらを見上げる加奈子の覚悟を決めたような優しい表情に、九鬼は目を瞑った。

それを見た加奈子は、優しい表情から一変し、いやらしく笑った。

「馬鹿目!」

加奈子の姿がまた、変わった。

今度は、ドラゴンそのものの姿となり、口から黒い炎を吐き出した。


「何!?」

九鬼は加奈子の声に気付き、目を開けた。

黒い炎が自分に向かってくるのが、見えた。

「クソ!」

九鬼の光る足は、黒い炎を切り裂いた。

そして、地上に突き刺さった。

「いない!」

蹴りの衝撃で、地面が抉れ…小さなクレーターができたが、肝心の加奈子には当たらなかった。

「加奈子!?」

クレーターから飛び出した九鬼の目の前に、魔物の姿になった加奈子がいた。

「その姿は…」

五メートル程の大きさがあるドラゴンは、九鬼を見下ろしていた。

「クソ!」

魔物と化した加奈子を見て、九鬼は構えようとしたが、その場で崩れ落ちた。

「え」

足に力が入らない。

いや、足だけではなかった。

全身に力が入らなかったのだ。

「ど、毒か…」

さっきの黒い炎は、毒を含んでいたのだ。

自ら作ったクレーターの中に、再び転がり落ちた九鬼。

「きええー!」

加奈子は咆哮を上げると、背中にある羽を広げ、空中に浮かび上がった。

そして、クレーターの底で動けない九鬼に向かって、口を開いた。