(やりすぎだ…梅)

高坂は、首を横に振った。

「隣も、俺の部屋より広い!贔屓だ!贔屓!」

ブーイングを言い出した輝に、

「どうせ…この部屋は、あまり使わん!そんなにいいなら、隣を使え!」

高坂がそう言う前に、もう鞄をほり込んでいた。

「ありがとうございます!」

にっと笑う輝。

二階に続々と、男子生徒が上がってきた。

高坂ははっとして、中に入るとドアを閉めた。

恐らく、他の生徒の部屋も、輝と同じで狭いはずだ。

「知られてはいけない」

高坂は固く誓った。

「極楽ですよ」

隣の部屋は、畳の間になっており、輝は大の字になっていた。

そんな輝を見下ろしながら、高坂は言った。

「明日から、島の内部に入る。あくまでも、我々の目的は…高木真由の情報を引き出すことだ」

「わかってますよ」

輝は、目を瞑りながら、頷いた。

「あまり、魔物に構うな。それと、中央の湖より先にいくことがあれば気を付けろ。さっきも注意があったが、あそこはレベルの高い魔物が多い。俺やさやかは、この島の安全ルートを知っているが…あれから、二年近く経っているから、まだ安全かはわからない」

高坂は、頭の中でルートを思い出していた。

「心配しなくても、僕は危険なところにはいきませんよ。できたら一週間、この部屋で過ごしたい」

そんなことを言う輝に、高坂はため息をつくと、

「できるかぎり、緑とさやかのいるパーティーと行動をともにするつもりだ。こちらの戦力では、もしもの時に対応できない。それか…パーティーをもう一度、中で編成し直したい」

高坂は顎に手を当て、

「打田君を、危険な目に合わせなくはない。彼女は、情報倶楽部とは関係ないからな」

「だったら…綾瀬さんは、どうするんですか?」

輝は半身を起こすと、高坂を見上げ、

「彼女も、危険な目に合わせることになりますよ」

「彼女は、大丈夫だ」

思わず、即答してしまった高坂に、輝が訊いた。

「どうしてですか?」

「え!」

ここで初めて、高坂はまずいことを言ったと気が付いた。