「!?」

驚いた真由が、声がした方を向くと、そこにリンネが立っていた。

「ご機嫌よう」

リンネは腕を組みながら、微笑んでいた。






「ここ…いいかしら?」

食堂で、1人座っていた九鬼の前に、綾瀬理沙が腰かけた。

九鬼の前に置かれているうどんを見て、理沙はため息をついた。

「うどんだけでは、バランスが悪いわよ。他に何か食べないと」

そんな理沙の言葉に、九鬼は目を丸くした。

「野菜もとらないとね。人間は、バランス良く食べないといけない体になっているのよ」

理沙の人間はという言い方に、九鬼は思わずに苦笑してしまった。

「何かおかしい?」

理沙は、首を捻った。

「いえ…」

九鬼は、口に手を当てて言っていいのか悩んでから、理沙に目をやると、おもむろに話し出した。

「あなたが…誰かに似てると思っていたけど…やっと思い出した」

九鬼はクスッと笑い、

「あたしの親友です」

「親友?」

「ええ…。お節介なところがそっくり…」

と口にしてから、九鬼は慌てて否定した。

「お、お節介じゃなくて…と、友達思いの大切な存在」

遠くを見るような九鬼の目に、理沙は何も言えなくなっていた。

しばらく無言になる二人の空気を切り裂く言葉が、食堂内にこだました。

「そろそろ時間だ!バスに戻るぞ!」

前田の声に、九鬼はお盆を持って、立ち上がった。

「そろそろ…いきましょうか?」

微笑む九鬼の顔に、理沙は一瞬見とれてしまった。その間に、頭を下げた九鬼が背中を向けて、食器置き場の方に歩き出した。

理沙は慌てて席を立ち、九鬼の背中に声を掛けた。

「さ、さっきは…乙女ブラックから、色が変わったけど…普段は変わらないの!」

その声に、九鬼は振り向き、笑顔を向けた。

「あの力は、過ぎた力…。あたしには、使いこなせないの」

「そ、そんなことは!」

理沙が言葉を続けようとしたが、九鬼は頭を下げると前を向いて歩き出した。

「真弓…。あなたこそが、正統な月影シルバーなのに」

理沙は遠ざかる九鬼の背中をしばし…見つめていた。