「乙女ソルジャー!?」

女生徒は、絶句した。

乙女パープルとなった加奈子は、女生徒を指差し、

「世の中には、二種類しかいない。狩る者と、狩られる者だ」

そう言うと、女生徒に向かって走り出した。

「乙女ソルジャーが、生徒を襲うだと!?」

両腕をなくした女生徒は、加奈子に背を向けると、すぐそばの校舎に向かって走ろうとした。

次の瞬間、女生徒がいる側の校舎にはめられた…すべての窓ガラスが割れた。

「な!」

無数の包丁が、一斉に窓ガラスを突き破ったのだ。

驚く女生徒の後ろで、加奈子は肩を揺らして笑った。

「詳しくはわからなかったが、貴様の能力はガラスや鏡などに関係するはず。先程見ていてわかったよ」

「く」

女生徒は振り向くと、鬼の形相で加奈子を睨んだ。

「念のためだ。両手がなければ、鏡を持つこともできないだろ」

「てめえ!」

女生徒は、刹那だった。

刹那は身を屈めると、加奈子に飛びかかろうとした。

「無駄だ」

今度は、加奈子の後ろの校舎の窓ガラスも割れた。

「お前は、追い詰められた獲物だ」

「お、おのれえ!」

刹那は、横に走り出した。

裏側の校舎に向かおうとしたのだ。

「無駄」

進路に、無数の包丁が突き刺さり、行く手を阻む。

加奈子は、両手を広げながら、刹那に近付いていく。

「これから…継ぎ接ぎだらけの肉体を分解してやるよ」

加奈子の周りに、無数のナイフや包丁が浮かんでいた。

「乱れ包丁!五月雨!」

ジクザクの軌道をつくりながら、包丁類が…刹那に襲いかかるのとほぼ同時に、割れた窓ガラスから、黒い影が飛び出してきた。

そして、加奈子の首筋にスネを叩き込んだ。

「何!」

首に決まったレッグラリアットにより、加奈子の体が揺らいだ。

刹那の全身に突き刺さるはずだった包丁類は、間一髪のところで、コントロールを失い、地面に落ちた。

「真弓!」

加奈子にレッグラリアットを決めたのは、九鬼だった。