「これが…終わりだと思うな!気を引き締めて行くぞ!」

前田の言葉に、生徒達が頷く中、バスはゆっくりと発車した。

その頃…後ろのバスでは、先程の九鬼の変身が話題になっていた。

ざわめく車内の中、唯一の無関心であるアルテミアの横を、理沙が通り過ぎると、前に続いてバスが発車する前に、九鬼の隣の席に座った。

「?」

少し驚く九鬼の顔を見ないで、理沙は口を開いた。

「本当は、みんな…感謝するべきなのよ。人知れず戦ってくれている者にね」

「…」

九鬼は無言になり、理沙から視線を外した。

(何だ?この気分は?)

本当は、ありがとうと言うべきなのだろう。

しかし、わざわざ言葉にしなくてもいい。そんな雰囲気が、2人の間に漂っていた。

(あたしは…この子を知っている?)

いや、知らないはずだ。

否定しても、心の奥が知っていると告げていた。

「…」

やはり気になった九鬼が、隣をちらりと見ると…理沙は寝ていた。

本当に寝ているのかは、わからない。

九鬼が、体を理沙に向けた時、車内が暗くなった。

バスが、次のトンネルに突入したのだ。

そして、トンネルの中程を通った時、九鬼は舌打ちした。

そして、少し身を浮かすと、フロントガラスの先を睨んだ。



「またか!」

前のバスにいたカレンが、眉を寄せた。 そして、立ち上がり、窓を開けようとした。

その動きを、浩也が止めた。

「僕がいくよ」

「こ、浩也!?お、お前は…」

カレンは少し狼狽えた。

浩也の強さは知っていた。

しかし、カレンは一抹の不安を覚えていた。

戦う度に、浩也が浩也ではなくなっていくような感覚。

(お前はここにいろ!)

そうカレンが言う前に、浩也の姿はバスから消えていた。

窓は開いていない。

テレポートしたのだ。

バスがまだ、トンネルを抜ける前に、出口に立つ浩也。

その前に、無数の魔物がいた。

先程の魔物と違い、明らかに…訓練されたもの達。

バスの進行を妨害するように、道の上に溢れていた。