しばらく、直進だけだ。

「モード・チェンジ!」

カレンは、ピュアハートの刀身を立てにした。すると、ピュアハートから光が放たれ、カレンを包んだ。

次の瞬間、翼を生やしたカレンがバスの上空を飛翔していた。 そのまま、崖の向こうに浮かぶ魔物達に斬りかかった。

「え」

唖然とする緑の前に、今度は梨々香が姿を見せた。

「やっと、上れた!」

梨々香は背伸びをすると、胸元に隠れていたステラに向かって、叫んだ。

「召喚!」

「了解!」

マシンガンが、梨々香の手に握られると、そのまま空に向かって連射した。

「危ない!」

カレンに、当たりそうになったが、何とか避けた。

「味方を殺す気か?」

カレンは、梨々香の銃弾を気にしながら、戦うことになった。

後ろでは、乙女ブラックが魔物を駆逐していた。

しかし、前のバスに比べて、後ろのバスは魔物の接近があまりなかった。 取り囲んではいるのだが…明らかに警戒していた。

その理由は、簡単だった。

先程の高坂と打田が、魔物とやりあっている時、反対側にも、魔物は接近していた。しかし、その時…魔物は気付いたのだ。 その中にいる恐ろしき存在に。

前にいるリンネは、完全に魔力を消し、魔物に襲われるという状況を楽しんでいた。

しかし、後ろにいるアルテミアは、魔物と目が合った瞬間、その魔力の片鱗を示した。

猿のように、真っ赤な顔をしている為に表情の変化はわからなかったが、魔物は恐怖し、すぐにバスを離れた。それ故に、バスの上にいた九鬼に、攻撃が集中したのだ。


「く!」

魔物の数は、尋常ではなかった。

乙女ブラックは、バスの屋根に着地すると同時に、変身が解けた。

月の出ていない時間では、ムーンエナジーをチャージできない為に、活動時間が限られているのだ。

空を見上げ、まだ残っている魔物達に向かって唇を噛み締めた時…九鬼の頭に、声が響いた。

(あなたに…限りなどない。無限の輝きを得ているのだから)

「え!」

九鬼はその声に驚いていると、足下から温かいものを感じた。