「高坂!」

幾多との久々の…そして、初めての遭遇を得た高坂のもとに、新聞部部室を飛び出してきたさやかが駆け付けた。

「幾多流と会ったのか?」

さやかは、校門を出てすぐの道で立ち尽くす高坂の背中を見つめ、問い掛けた。

「…」

高坂は深呼吸をした後、ゆっくりと言葉を口にした。

「ああ…」

「何か思い出したのか?」

さやかは、眉を寄せた。

「思い出したというよりも…頭の奥に刻まれていたものに、ぴったりと合致したという感じだ」

高坂は口許に笑みをつくると、ゆっくりと振り向き、

「それに、向こうが…俺のことを知っていた」

さやかの方へ歩き出した。

「高坂…」

心配そうな表情を浮かべるさやかの横を、そのまま通り過ぎた。

「心配するな。やつの監視はするが…それよりも、今は注意すべき存在がいる」

「女神…ソラか?」

さやかも振り返り、再び高坂の背中を見た。

「そうだ」

高坂は頷いたが、足を止めることはしなかった。

「だけど!女神相手に、あたし達に何ができる?」

さやかは、不安に思っていることを…素直に口にした。

「ただ…全力をもって、立ち向かうだけだ」

高坂は、誰もいない前方を睨み、

「何事にも関してな」

これから起こることへの決意を新たにした。

「高坂…」

さやかはもう何も言わずに、ただ…高坂の後ろ姿を見送った。

「部長!只今、戻りました!」

そんなさやかの後ろに、真由達を途中まで送って来た梨々香が、現れた。

軍人のように、さやかの背中に敬礼する梨々香の方を向かずに、

「御苦労様。今日はもう遅いから、帰りなさい。報告は明日聞くから」

そのまま、部室に向かって歩き出した。

「ええ!折角戻ってきたのに!」

文句を言いたかったが、部長命令は絶対である。

仕方なく、来た道を…梨々香はとぼとぼと戻っていた。


合宿まで、あと2日。