「やっぱり、面白いわね…あなた」

燃え上がる炎の中から、一人の女が姿を見せた。

その女は、真と一緒に乗車して来た女。

「な!」

幾多は絶句した。

その女は燃えていた。いや、炎そのものだった。

「あなたのような人間は、この世界には…勿体ないわ」

女から炎の髪が伸び、真の背中を強打したのだ。

「あ、あなたは!?」

幾多は目を疑った。

女が近づいてくる度に、炎が消え…姿を見せたのは、白衣を着た保健室の先生だった。

「人間でありながら…あたしを満足させてくれたお礼に」

保険の先生は、白衣のポケットからあるものを取り出した。

それは、黒いカード。

「あなたを招待してあげる…。こことは、違う世界に」

保険の先生は、妖しく微笑んだ。

「こことは…違う世界」

幾多は、悩むことなく…その招待状を受け取った。

この美しくない世界は、幾多には何の価値もなかったから。





「そう!僕は、この世界に来た!」

幾多は、海を進むボートの中で、両手を広げた。

「あの世界には、人として生きていく資格がある者が少なかったからさ」

近づいて来る島を見つめ、

「本当は…人は素晴らしいはずだろ?」

幾多は、島に笑いかけた。

「真…こう見えても、僕は人を信じてるんだよ。だから、早く来い!待ってるよ」