「お前達は、恐怖して、大人しく!す、座っていたら、いいだよ!」

ナイフを向けても、平然としている学生に、犯人は戸惑い震えながら、ナイフを向けた。

「大丈夫だよ!こんなやつだ」

立ち上がった学生の後ろにいた女子学生も、席から離れた。

「殺す度胸なんてないよ」

その後ろにいた屈強な体躯をした学生も、立ち上がった。

無言で、2人の後ろから犯人を睨んだ。

「俺らだけでも、降ろしてくれないかな?忙しいんだよ。俺らは」

偉そうに、少し威圧的にいう学生に、犯人はキレた。

「どうして、てめえらのいうことを、きかなくちゃいけないんだよ!なめるな!」

運転席から離れ、ナイフをさらに学生に向けた。

その時、ぬうっと犯人と学生の間に横から、腕が伸びて来た。犯人の腕を掴むと、そのままあらぬ方向に捻った。

「ぎゃああ!」

変な形に曲げられた腕から、ナイフを奪ったのは、幾多だった。

「!?」

突然、三人の前に現れた幾多に、三人の学生は驚いた。

幾多は、学生達に笑いかけると、

「素晴らしい。君達の自分勝手な考え」

幾多は右腕で、犯人を締め上げながら、

「だけど…」

今度は笑みを止めると、冷ややかな瞳を向けた。

「気に入らない」

幾多はそのまま腕に力を込め、犯人の腕を折った。

そして、背中から奪ったナイフを突き刺した。

「ヒイ」

いきなり男を刺し、ナイフを抜くと、血が噴き出した。

その血を気にすることなく、幾多は学生達を見た。

「君達の言い分だ」

幾多は三人に目をやり、訊いた。

「なぜ自分だけ助かろうとする?」

「てめえ!頭がおかしいじゃないのか?」

一番前にいた学生が震えながらも、強がってみせた。

その時、バスは突然急停止した。

バスの惨劇をバックミラーで見ていた運転手は急停止すると、運転席から出ようとした。