妹の死から、数日後…休まる時のなかった真は学校を出て、すぐに目眩を感じ、ふと足を止めた。

頭を押さえ、少し休んでいると…真の目に、あるものが飛び込んで来た。

それは、普段はいつもある何気ない風景の一つであるが、

いつもと少し色が違う為、無意識の視線が、それをとらえたのだ。

「赤い…月?」

血のように、熟した果実のように、赤い月。

目眩が治まった真は、その異様さに息を飲み、目を奪われた。

そして、最寄りの駅まで歩くはずだったのに、月に魅せられた真は、学校のそばにあるバス停に、タイミングよく滑り込んできたバスに吸い込まれるように、足が動いた。

真の前から、バス停で待っていた女の後に続いて乗り込んだ。

運命とは時に、残酷な程…無慈悲な時がある。

まったく違う2人が、混じる時…それは、神の残酷さに似た反応を起こした。

バスに飛び乗った真は、頭がぼっとしたのまま、無意識にチケットを取ると、一番後ろに座った。


「…当バスをご利用頂き、誠にありがとうございます。当車両は、途中…」

車内に流れる無機質なアナウンスを聴きながら、今までの疲れの為か…真はバスの揺れについ、うとうととし、寝てしまった。

その為、今から起こる惨劇の始まりを見ることはなかった。