しかし、すぐに両手を広げたままで肩をすくめると、

「感動の再会は、またの機会としょう」

そのまま正門の向こうに姿を消した。

「待て!」

高坂は絶叫した。

「真!僕は先に、島に向かうよ。向こうでこの続きをやろう」

「ふざけるな!」

高坂が全速力で、正門を通り過ぎた時には…幾多流の姿はどこにもなかった。


「く、くそ」




二人の兄弟…その物語は、時空を越え…実世界から始まった。


「僕は…こう思うんだ」
「は、はい…ご主人様」

妙に敏感に反応する肌に、指を這わしながら、男は優しく微笑みながらも、心の中では冷めていた。

(女ってやつは…)

どうせ、どうなるか…どうやるのかわかっている。


だから……。

身を任せ、頬を赤らめ、期待している女の表情に、男は逆にやる気が、萎えた。

もうシミュレーションは、できている。

だから、男は最短距離を選んだ。

「あ」

ブリッジのように身を反らした女が、満足そうに果てたのを確認すると、男はベットから離れた。

「まったく…」

女が果てたからか…静かになった部屋に、外の喧騒が少し響くようになった。

ポケットから、ハンカチを取り出し、中指を丁寧にふきながら、男は窓の方に顔を向けた。

グラウンドで、青春を謳歌する学生達の様子を見つめていた。

男は元気な生徒達に、鼻を鳴らした。

「あらあ?健康的な若者に、珍しく惹かれてるのかしら?」

いつのまにか、男の前に、白衣を着た女が立っていた。

女は、保健室の女医だった。

女医はベットの上で、気を失っている女子生徒を見て、目を細めた。

「不健康なことをしてたみたいだしね。幾多君」

窓を見ていたのは、幾多流だった。

幾多は女医の言葉に、肩をすくめて見せた。

「不健康ですかね?」

幾多はそれ以上何も言わずに、窓の外を見つめ続けた。