カードという便利なものができてから、剣士であろうと、闘士であろうと…魔力による防御を前提にして、戦い方を組み立てていた。

しかし、カレンの肉体が物語るのは、できるだけ肉体そのものを使って、受け身や防御を叩き込んできたという事実である。

彼女の師であるジャスティン・ゲイは、騎士団長や魔王と戦うことを想定して、ディグシステムに防御を任せ、捨て身の戦法で戦うことを選んだ。しかし、それらの相手以外では、できるだけ…体術のみの防御を心がけていた。

人間の肉体は何もしなければ衰え、年を取れば衰退していく。

だが、日々の鍛練を怠らなければ…衰えを止めるだけではなく、さらなる高みに昇華できることも知っていた。

それは、並大抵の努力では達成できない。

ジャスティンは、カレンを鍛えるにあたり、魔力の使い方やレベルのアップよりも、肉体の強化をメインに行っていた。彼女のセンスを考えれば、レベルは容易であろうと判断したからだ。

それが、脅威的な回復力と精神力をカレンにもたらす結界となったのだ。

しかし、だからと言って、カレンがやられた場所が、街中ではなく、ジャングルだった場合…気を失った時点で、彼女の命はなかったであろう。

カードよる治療魔法により、カレンの外傷はほとんど回復することができた。

あとは、技を受けた時による衝撃によるダメージだが…それは、自然治癒力に任せることとなる。

「もう…大丈夫だと思います。最近は、なぜか…ムーンエナジーの数値が高いんですよ」

奥の部屋から出てきた舞は、九鬼に笑いかけた。

「ムーンエナジー…」

月影の1人である自分には、馴染みの深い言葉であるが、一般の生徒から言われると感慨深いものがあった。

少し考え込む九鬼を見て、舞は息を吐くと、説明し出した。

「闇を照らす力…ムーンエナジー。それは、あまりにも平等な力。それ故、地上にいるすべてのものに降り注ぐけど、魔物を倒す程の力を得ることはできない。ただ…例外はあります」

舞は、九鬼を見た。