警察が到着する数分前…倒れたカレンの前に立っていたのは、九鬼達だった。

「カレン…」

傷だらけになって横たわるカレンの姿は、何時間もかけて拷問されたように見えた。しかし、それが一瞬の出来事であったことを、九鬼は理解していた。

「だ、誰がやったんだ!?」

九鬼の隣に駆け寄ってきた緑は、カレンの状態に驚くよりも…カレン程の達人をこのような状況にした相手に、戦慄していた。

「神レベル…。恐らく、女神」

高坂はカレンのそばでしゃがむと、その傷の多さに顔をしかめた。

「…」

理沙は少し離れた場所で、無言でカレンを見下ろしていた。

輝も、梨々香も…何も言えなかった。

ただ1人だけ…ほくそ笑んでいる者がいた。真由である。

彼女は、満足げに頷いていた。

「彼女を、学校に連れていきます」

九鬼は、高坂の横で片膝を地面につけると、カレンをお姫様抱っこの形で持ち上げた。

「び、病院に連れていく方が…いいんじゃ…」

恐る恐る言った輝の言葉に、高坂がこたえた。

「その辺の病院に連れていくよりは、学校の方が回復魔力を使う為のポイントが、大量にある。それに…月の女神のご加護も、学校の方が受けやすい」

「つ、月の女神?もしかしたら…か、彼女が!」

女神という言葉に、敏感になっている輝の横に、真由が来た。

「フッ…。月の女神?」

真由は鼻で笑うと、

「そんな旧タイプの女神に、何ができるのよ。この女をやったのは、天空の女神よ」

「て、て、天空の女神!?あ、あの〜ブロンドの悪魔!」

輝は思わず、声を荒げ、

「あ、あの〜残念な美少女…ダントツナンバー1の女神!」

少し興奮状態になる。

「天空の女神か…」

高坂の脳裏に、先程の女生徒の姿がよみがえる。

そんな会話の中、九鬼はカレンを抱き上げながら、変身した。

「先に、学校に戻ります」

そう言うと、高坂達に頭を下げ、そのままその場から消えた。

高坂は、カードを取り出すと、学校にいる舞に連絡を取り、カレンの治療にあたるように告げた。