「ええ…人は、大した力を持っていませんから…」

真由は頷くと、顔を伏せた。

本当は、今の言葉には…続きがあった。

(そんな蛆虫が、我が物顔でこんな建物を作る!だから、死んでも当然!死ぬことが必然!人間は、みんな死ぬべきなのよ。今回は、少な過ぎる。なぜ…)

真由は、被害者の遺体に頭を下げる高坂を横目で、チラっと見て、

(このひ弱な人間が、生きている?)

さらに顔をしかめた。


「ごめんなさい…」

そんな2人の後ろに、変身を解いた九鬼が立ち、頭を下げた。

「あたしが、もっと…早く来ていたら…」

「そんなことはない。君が来てくれて助かったよ。少なくとも、ここにいる者達はな」

高坂は振り向き、輝や緑達を見回した。

「ありがとう」

そして、九鬼に頭を下げた。

「先輩、やめて下さい!」

九鬼は、慌てふためく。 お礼を言われることに、慣れていないのだ。

今まで、戦ってきても正体を隠してきたからだ。

魔物が公にはいない実世界では仕方がないとはいえ、ブルーワールドでも月影のいろんな噂が飛び交っていた為、自分の正体を証すことはしなかった。

それに、自分は…この世界の人間ではないというは負い目もあった。

しかし、デスパラードとの戦いをえて、もしかしたら自分の魂は、この世界で生まれたのではないかと思うようになっていた。

それに、この世界に住む人間の過酷な環境を考えれば…自分は、ここで戦い続けるべきではないのかとも思い始めていた。

「乙女…ブラック」

武器をしまった梨々香は、変身を解いた九鬼を、少し離れた場所から見つめ、

「やはり…生徒会長だったんだ…」

呟くように言った後、駆け寄り、思い切り頭を下げた。

「先程は、危ないところを助けて頂きありがとうございました!」


地面に額がつくのではないかと思うほど頭を下げた梨々香の行動に、九鬼は逆に慌てた。

「そ、そんなお礼なんていいのよ」