自分に言い聞かすように、そういうと…後藤はショッピングモールを後にした。





「ごめん!待たせて」

謝りながら、輝は3つのカップをテーブルに置いた。

「構わんよ。まだ時間はある。気にするな」

と言いながら、隣の席から手が伸びて来て、ジュースの入ったカップを取った。

「え?」

あまりのことに驚いてしまい、一瞬だけ言葉を失ったが、すぐに気を取り直して、輝は隣に座る男を睨んだ。

「部長!どうして、ここにいるんですか!」

「うん?」

カップの蓋を開けながら、高坂は横目で、立ち尽くす輝を見上げた。

その様子に、もう一人…驚いているものがいた。

緑である。

「何考えてんだ!あの人は!」

頭を抱えるよりも、殺意に似た感情が沸き上がって来た。1人だけ、気配を消している自分が、馬鹿に思えて来た。

「あとで…とっちめてやる!」

遠くから高坂を見つめる目に、殺気が宿る。



「う!」

ジュースを飲んでいた高坂は、突然の寒気に、輝の方を見て、

「できれば…ホットの方がいいんだが」

カップを突きだした。

「自分で買って下さい!」

輝は、そのカップを受け取らなかった。

「大体…それ!俺の分だし!どうして、部長がここにいるんですか!」

輝の怒りが混じった声にも、高坂は動じない。

「フッ…。ここは、ショッピングモールだ。誰がいてもおかしくあるまいて」

高坂はそう言うと、仕方なく冷たいジュースを飲む。

「あのですね!」

輝がさらに詰め寄ろうとした時、それまで黙っていた真由が口を開いた。

「そうですよね…。誰がいても構わない…」

真由は顔をふせ…ジュースを見つめていたが、突然顔を上げると、目だけで周囲を見回した。

そんな真由を、正面からじっと見つめる理沙。

「それなのに…」

真由は、ため息をつき、

「人間しかいないなんて…不自然だと思いませんか?」

おもむろに口許を緩めた。