大きく息を吐くと、後藤は頷き、

「そうか…。ありがとうな」

お礼を述べると、慌てて席を立った。

そんな後藤に、梨々香は手を差し出した。

「おじさん!まさか…タダって訳じゃないでしようね?それに…」

梨々香は目で、パフェの周りに立つ2人の妖精に目をやった。

「ほとんど…食べられたんだけど」

2人の妖精は、一心不乱にパフェで素手でパクついていた。

「く!」

後輩は仕方なく、カードを出すと梨々香の手のひらに乗せた。

そのカードに、梨々香は自らのカードをかざすと、紙幣の代わりになっているポイントが、転送された。

「毎度あり!」

梨々香は笑った。

後藤はため息をつき、

「そういう図太さは…記者に必要か」

「卒業したら、おじさんの雑誌によろしくね」

笑顔を向ける梨々香に、後藤は頭をかき、

「うちより、大手の会社はいっぱいあるぞ」

「あくまで滑り止めよ」

「ケッ!ちゃっかりしてやがる」

顔をしかめ、テーブルから離れようとする後藤に、梨々香は最後の質問をした。

「そう言えば…おじさん。どうして、ここにいるの?学校から離れてるのに」

「ここは…中継地だからな」

後藤は、まだパフェを食べているアイを、太るぞと言いながら、つまみ上げ、

「俺の師匠の十三回忌だからな」

フッと悲しげに笑った。

「そうか!おじいちゃんの仲間の」

梨々香は思い出した。

大月学園と五つ程駅が離れた場所に、ブレイクショットに所属していた後藤の師匠の奥さんがやっている店があるのだ。

ほとんど山の中になるが…。

「お前を見ると、師匠のお子さんを思い出すよ。確か…同い年のはずだ」

「行方不明だったっけ?」

梨々香は、首を捻った。

「そうだ…。もう何年もなる」

後藤は、遠くを見つめた。

彼の師匠の名は、阿倍剣司。

ある出来事を追っていて、命を落とした。

「邪魔したな」

後藤は手を上げると、梨々香の座るテーブルから離れた。