「相変わらず…憎たらしい」

妖精も顔をしかめ、舌を出した後、ため息をついた。

「これが…あの勇者ダラスの孫だと思うと、情けなくなるわ」

「お爺ちゃんは、関係ないでしょ!それに、あんまり会ったこともないしさ!」

梨々香は、パフェにスプーンを突っ込んだ。

「それにしても…」

妖精は、じっと梨々香の顔を見つめた後、

「ダラスの血が混じってる癖に、顔はのっぺらぼうよね。鼻が低いし」

肩をすくめて見せた。

次の瞬間、妖精の顔に銃口が向けられていた。

「あ、あたしの鼻が、団子鼻って言うつもりか?」

「成る程ね!」

妖精はポンと手を叩き、

「この地区では、こんな鼻をそう言うんだ!」

嘲るように笑った。

「てめえ!」

梨々香が怒りに任して、銃の引き金を弾こうとした瞬間、横合いから手が伸びてきて、弾倉を握りしめた。

引き金を弾けなくなった。

「こんなところで、銃を撃とうだなんて…本当に、新聞記者を目指しているのか?」

呆れたように言う低い声に、梨々香ははっとして、銃を掴んでいる男を見上げた。

「おじさん!」

梨々香の顔が、明るくなった。

「やれやれ」

男は頭をかくと、そのまま円形のテーブルの梨々香の横に座った。

「あんたが、おちょくるからよ」

男の後ろから、もう一人の妖精が出てきて、パフェの前に立つ妖精に注意した。

「だって!こいつが、無能だからよ!」

腕を組み、ぷいっと横を向いた妖精の名は、ステラ。ブレイクショットのリーダー格だったダラスとかつて、契約していた妖精だった。

そして、男と一緒にやってきた猫目の妖精の名は、アイ。

「おじさん。もう体は、大丈夫何ですか?」

梨々香は、煙草をくわえた男に訊いた。

「ああ…何とかな。やっと復帰できるよ」

男は煙草に、マッチで火をつけてから、梨々香に微笑んだ。

男の名は、後藤。マイナー雑誌の記者をしていた。