「うん?」

妙な気配を感じ、九鬼は生徒会から飛び出した。

しかし、何も感じない。

「一瞬で、消えた!?」

九鬼は走り出した。

しかし、誰もいなかった。

だが…。


「また血の匂いだけ!」

九鬼は、乙女ケースを取り出すと握り締めた。

「く、くそ!」


アルテミアとの戦いの時、九鬼は乙女シルバーになれた。

しかし、それから変身しても、乙女シルバーにはなれなかった。

黒いままなのだ。

今の九鬼は、乙女ブラックというよりは…乙女ダークに近い。

(闇を拭えない!)

月の女神である理香子が、実世界に戻る前に、力をこの乙女ケースに注いだ。

だからこそ…乙女シルバーになれたのだろう。


(しかし!)

九鬼は、乙女ケースを突きだした。

「装着!」

「やめておけ!」

突きだした手に、ホークが刺さった。

「何!?」

突然の痛みで、九鬼は乙女ケースを床に落とした。

「今の貴様では、真実を掴めない」

いつのまにか…後ろに、乙女パープルが立っていた。

「加奈子!」

九鬼は、突き刺さったホークを抜くと、乙女パープルに向かって構えた。

しかし。


「フン!」

乙女パープルは、この前と違い、襲いかかることなく…その場から消えた。


構えたまま、虚しく立ち尽くす九鬼。

「一体…」

落ち着きを取り戻した九鬼は、乙女ケースを拾い上げた。

「何が起こっているんだ」

黒い乙女ケースを見つめ、九鬼はため息とともに....しばし目を瞑った。