「どうしたの?さっさと座りなさいよ」

突っ立っている輝に、さやかが自分の膝に、頬杖を突きながら声をかけた。

「あ…はい」

輝は返事をすると、さやかの隣に座る高坂の横に、腰かけようとした。

「狭い!」

二人掛けのソファに、三人はきつい。

さやかは毒づくと、

「あんたは、前に座りなさい!」

ぎろっと輝を横目で睨んだ。

「え」

普段なら、慌てて移動するのだが…。

輝は、前を見た。

「…」

俯いている理沙を見ていると、動けなくなった。

「さっさと行け!」

言うことをきかない輝に、さやかは段々とキレ始めた。

「…」

それでも動かない輝に、さやかが手を出す前に、

「やれやれ…」

2人の間にいた高坂が立ち上がった。

「俺が…行こう」

そのまま、理沙の隣に座った。

それを見て、さやかがため息をつくと、

「まあ〜とにかく!他殺の線で探ってみるわ。それでいいかしら?」

気を取り直し、前に座る理沙に訊いた。

「よ、よろしくお願いします」

理沙は俯いたまま、頷いた。

「今日は、もう捜査もできない。警察がいない…明日、屋上から当たってみるよ」

高坂はそう言うと、隣に座る理沙に目を向け、

「それに…今日はもう遅い」

じっと横顔を見つめた後、輝に顔を向けた。

「輝。彼女を駅まで送ってあげてくれ。何があるか…わからんからな」

「え!あっ」

高坂の言葉に、輝は驚き、しどろもどろになる。

「頼んだぞ」

「は、はい!」

何とか頷き、ソファから立ち上がった輝。

しばらくして、理沙と輝は新聞部の部室から出た。

2人が出ていってから数秒後、さやかが前に座る高坂に訊いた。

「どういうこと?どうして、輝を…」

理由をきこうとしたさやかを、高坂は右手を突きだして止めた。

そして、カードを取り出すと、

「舞。聞こえるか?今、輝といっしょに歩いている生徒を尾行しろ!」

情報倶楽部の部室に指示を伝えた。