魔力を完全に消し、さらに表面にガラスのコーティングをした結界を周囲に張ることで、完璧にカモフラージュしていた。

同じような岩が転がり、他に何もない川辺が、幸いした。

鏡に映った周りの景色を、見破ることができなかった。

(魔力を周りに、無意味に放出していることからわかったわ。あいつらは、魔力をコントロールできない)

ティフィンは確信していた。

魔神レベルの魔力を放出していれば、普通の魔物は寄り付かないだろう。

防犯にもなるが、向こうの位置を知ることもできた。

ティフィンは、鉄仮面の女達が去っても…しばらくは、結界を解かなかった。

(それにしても…)

自分の後ろに、横たわる少年を見つめた。

額の傷は、骨を抉っていたが、銃弾は貫通していない。

表面を抉ったに過ぎない。

(狙ったとしたら…大した腕ね)

ティフィンは、感心しながら、視線を右腕に移動させた。

(これは…何かしら?)

ティフィンには、まったく見覚えがなかったが…なぜか、知ってるような気がしていた。

(とにかく…ここは、危険だわ)

ティフィンは、男の子を連れて移動することにした。

あまり面倒なことに関わりたくなかったが…ここに、男の子を置いておけば、大変なことになる気がした。

(ああ…)

深くため息をついた後、ティフィンは無意識に呟いた。

(助けてよ…赤星)