(ここは…どこだ)

瞼を開けた瞬間、初めて見たかのような光の眩しさに、目を細めた。

(あたしは…死んだのか?)

一瞬、そう思ったが…。

「よかった。気が付いたんだね」

光を遮るように、覗き込んで来た顔を見て…理解した。

(まだ…あたしは、生きているだ)

そう思うと、嬉しさで涙が…流れ…

「!」

る訳がなかった。

寝ていたベットから、飛び起きた九鬼の脳裏に、自分を襲った少女の笑みがよみがえる。

(危険だ!何とかしないと!)

目覚めたばかりだというのに、少女を探す為にベットから出ようとした九鬼は、そのまま…バランスを崩した。

まだ頭と体の伝達が上手くいかなかった。

ベットの真下の床が見えた。

「大丈夫?」

だけど、落ちる訳がなかった。

そばに、浩也がいたからだ。

九鬼を受け止めると、浩也は再び九鬼をベットに寝かせた。

「無理してはいけないよ。外傷は大したことないけど…心臓が一度、止まったんだから。しばらくは、休んだ方がいい」

優しく話かけながらも、九鬼の体をしっかりと押さえつける浩也の力に、抵抗できない。

「そんな場合じゃない!学園内に恐ろしい相手が、侵入している!みんなが危ない!」

こんな状況になりながらも、他人を心配する九鬼に、浩也は自然と温かい気持ちになった。


だけど…それとこれとは、別である。

浩也は、九鬼を押さえつけながら、優しく諭すように言った。

「心配しなくていい。その恐ろしい相手よりも、さらに恐ろしい相手が…きっと、何とかしてくれるよ」

「え」

浩也の笑顔に、九鬼は思わず息を飲んだ。

「大丈夫…。あの人が、何とかしてくれるよ」

「あ、あ、あの人って?」
動きを止めた九鬼の当然の質問に、何故か…浩也は首を傾げた。

自分でも、誰のことかわからなかった。

だけど…ぼんやりと浮かんだイメージを口にした。

「天使…だよ」