新聞部の部室から出た香坂は、カードを取り出した。

「舞!聞こえるか?」

微かなプチっという音の後、

「はあい!部長!聴こえますよ!誰にも盗聴されてません!大丈夫です!」

カードから、情報倶楽部の部室にいる櫻木舞の声が聞こえて来た。

「それにしても、部長。まだ、学校にいたんですね。大丈夫でしたか?」

部室に住んでいるに近い状況の舞は、防衛軍から拝借したパソコンの前にいた。動力の魔力を内蔵したエネルギーパックも大量に持って来た為、ここ数年ケチケチと使ってきた反動で、パソコンから離れられなくなっていたのだ。

「舞!ここ1時間の西校舎屋上の状況を知りたい!防衛軍の監視式神の映像を入手できないか?」

特別校舎に向いながら訊く香坂に、

「残念なお知らせです。防衛軍が解体してからも、内蔵魔力パックで動いていた式神の…最後の一体の魔力がついに!3日前に切れました」

「何!?」

「いや〜あ!ほったらかしになってたから、使い放題で!アハハハ!」

どうやら…舞が使ったらしい。

「でも…全盛期でも、全地域を監視することはできませんでしたよ。あらかじめ…上空に待機させておかないと」

「そ、そうか…」

肩を落とした香坂に、

「あ!」

何か思い出したような舞の声が聞こえ、

「校長が至るところにつけていた監視モニターが、屋上にもあるかも!?」

「監視モニター?」

「ちょっと待って下さいよ」

舞はパソコンを起動させ、キーボードを叩いた。

ディスプレイに、理事長室のある廊下や、生徒会前、クラブハウスや正門と裏門…女子更衣室などが映った。

「屋上はないですね」

画面に目を走らす舞の声に、

「わかった」

香坂は頷くと、通信を切ろうとした。

「先輩!そう言えばさっき…凄まじい魔力の反応がありましたけど…。それも、二つ!」

「な!」

香坂は手を止めて、絶句した。

「何か、地上で変化はありませんでしたか?」

「……生徒が一人、飛び降りたよ」

「そ、それだけですか!」

「それだけとは、不謹慎だろ!」