そんな出来事の数分前、カレンはやっと…浩也のいる部屋にたどり着いていた。
「赤星!」
部屋に入ったカレンが見たものは、倒れている九鬼に手を当て…文字通り、手当てをしている浩也の姿だった。
手から溢れる光が、優しく九鬼を包んでいた。
(治癒魔法!?魔力が使えるように、なっている)
カレンは畳に上がることなく、その様子に驚いてしまった。
今まで、自分の意志に反して、無意識に発動することがあっても、自由に使える感じではなかった。
(やはり…変わってきているのか)
カレンは、浩也が差し伸べている右手とは反対の手を見つめた。
(あれが…ついてから)
そこには、指輪があった。
「よし」
浩也は頷くと、九鬼のそばから立ち上がった。
そして、扉の前にいるカレンに気付き、
「カレンおばさん」
笑顔を向けた。
「おばさんは、つけるな!」
カレンは軽くキレた。だけど、怒りはそんなに続かない。 畳の上に土足で上がると、九鬼のそばに来た。
「大丈夫なのか?」
カレンは九鬼を見下ろしながら、浩也に訊いた。
「うん」
浩也は頷き、
「傷は大したことないよ。多分、誰かの攻撃で…心臓を止められて、仮死状態になったんだと思う。僕がここに来た時には、心臓は動いていたし…脳へのダメージもないと思うよ」
「…」
カレンは、てきぱきと答える浩也に、少し目を見開いていた。数日前までの…目覚めたばかりの無知な子供のような雰囲気が一変していたからだ。
(変わったというよりは…目が覚めたような感覚に近いか)
カレンは冷静に分析しながらも、別の…肝心な質問を口にした。
「助けたのは、誰だ?」
「そ、それは…」
浩也は、口ごもってしまった。
なぜだろうか…。
美亜の名前を出すのを、躊躇ってしまった。
だから…口から出たのは、嘘の言葉だった。
「知らない…」
精一杯の嘘。
「赤星!」
部屋に入ったカレンが見たものは、倒れている九鬼に手を当て…文字通り、手当てをしている浩也の姿だった。
手から溢れる光が、優しく九鬼を包んでいた。
(治癒魔法!?魔力が使えるように、なっている)
カレンは畳に上がることなく、その様子に驚いてしまった。
今まで、自分の意志に反して、無意識に発動することがあっても、自由に使える感じではなかった。
(やはり…変わってきているのか)
カレンは、浩也が差し伸べている右手とは反対の手を見つめた。
(あれが…ついてから)
そこには、指輪があった。
「よし」
浩也は頷くと、九鬼のそばから立ち上がった。
そして、扉の前にいるカレンに気付き、
「カレンおばさん」
笑顔を向けた。
「おばさんは、つけるな!」
カレンは軽くキレた。だけど、怒りはそんなに続かない。 畳の上に土足で上がると、九鬼のそばに来た。
「大丈夫なのか?」
カレンは九鬼を見下ろしながら、浩也に訊いた。
「うん」
浩也は頷き、
「傷は大したことないよ。多分、誰かの攻撃で…心臓を止められて、仮死状態になったんだと思う。僕がここに来た時には、心臓は動いていたし…脳へのダメージもないと思うよ」
「…」
カレンは、てきぱきと答える浩也に、少し目を見開いていた。数日前までの…目覚めたばかりの無知な子供のような雰囲気が一変していたからだ。
(変わったというよりは…目が覚めたような感覚に近いか)
カレンは冷静に分析しながらも、別の…肝心な質問を口にした。
「助けたのは、誰だ?」
「そ、それは…」
浩也は、口ごもってしまった。
なぜだろうか…。
美亜の名前を出すのを、躊躇ってしまった。
だから…口から出たのは、嘘の言葉だった。
「知らない…」
精一杯の嘘。