(エルフの血をひく者か)

ジャスティンは、岩場の間に立つ女を見つめた。

エメラルドグリーンの髪を後ろに束ねた女は、ジャスティンに頭を下げると、微笑みながら背を向けて歩き出した。

(うん?)

ジャスティンには、それが…ついて来いの合図に思えた。

(行くか…)

なぜだろうか。ジャスティンは疑うことなく、女の後を追った。女の後ろ姿にどこか…懐かしいものを感じたからだ。

女は崖の前までいくと、足を止めた。そして、人の腰辺りで崖の側面に埋まっている石に、人差し指で触れた。

次の瞬間、女の姿が消えた。

(な!)

ジャスティンは、声には出さずに絶句した。慌てて近付くと、女が触れた石を見た。

拇印ほどの大きさの魔法陣が書かれていた。

(こんなもの…気付かないぞ)

ジャスティンは躊躇うことなく、指を魔法陣に押し付けた。

次の瞬間、ジャスティンは崖の中にした。 正確には、崖の地下の空間にいた。

「ようこそ。ジャスティン・ゲイ殿。あなたが来ることを待っておりました」

「な!」

ジャスティンは、村の広場にいた。

数多くの木造の家が並ぶ村の中央にある広場。

「正確には…あなたが来られるという奇跡を」

ジャスティンの前に、先程の女と…年老いたエルフの男が1人。

「これも…運命ですな。私の寿命が尽きる寸前に、あなたが来られるとは」

男は、ジャスティンを見上げた。

エルフの特徴である長い耳は、垂れ下がり…皺が目を隠していた。

「ここは…」

ジャスティンは、洞穴でありながら、澄んだ空気に驚いていた。

「エルフ…最後の村です」

男は、ジャスティンに告げた。

「最後の村?」

ジャスティンは、周囲を見回した。家屋は沢山あるが…気配がしない。目の前にいる2人以外は…。

ジャスティンの動きを見て、男はこたえた。

「村の者達は…皆、寿命を迎えて死にましたよ」

「!?」

ジャスティンは、男に視線を戻した。