「風の女神に変わっただと!?」

少し舐められていると感じたアルテミアの眉が、跳ね上がった。

「キハハハハ!」

無意味に、ソラは笑い、

「だって、空の女神よりも上の天空の女神が、いらっしゃるんですもの」

アルテミアに、ねっと相槌を求めた。

(なるほどな…)

アルテミアは確証した。

(こいつは…ライの女神だ)

常々…アルテミアは、疑問に思っていることがあった。

天空の騎士団の話である。

水と炎の騎士団と違い、天空の騎士団ができたのは、アルテミアが生まれてからである。

しかし、その前から…騎士団は編成されていたのだ。

自分が生まれたことは、想定外であることを…アルテミアは知っていた。

幼い頃から、姉達がそう言っていた。

しかし、だとしたら…天空の騎士団は…なぜ、女神が創られなかったのか…。

幼き頃より、心の隅で感じていた違和感の正体を、アルテミアは知った。

「だから!あたしは、風の女神ソラなの!」

ソラは、両手を広げた。すると、強い風が…アルテミアの後ろから、吹き抜けた。

ブロンドの髪が、乱れたが…アルテミアは動じない。

「御姉様!1つ質問があります!」

ソラがくるりと一回転すると、風は竜巻になり、上空へと上がっていく。

そんな現象を気にも止めず、アルテミアはじっとソラを見ていた。

ソラは真っ直ぐ背筋を伸ばして、立つと、

「どうして…あの女を助けたのですか?折角、磔にしたのに」

「お前の仕業か…」

アルテミアは目を細め、一歩前に出た。

「…でも、残念ですね」

ソラは、肩を落とし、

「愛する男に、邪魔されて!」

その後…満面の笑顔を作った。

「貴様!」

アルテミアの姿が消え、一瞬にしてソラの前に来た。

渾身の正拳突きが、ソラのボディに叩き込まれた。

「!?」

インパクトの瞬間、拳に当たった感触がまったくないことに気付いた。