西校舎の屋上までテレポートした美亜は、着地と同時に舌打ちした。

「まだ早すぎる!」

それは、己に対する舌打ちだった。

「まだ…目覚めていけない」

美亜は、浩也と親しく話し過ぎたことに後悔していたのだ。

夕陽は、完全に消えていた。

夜のとばりの始まりの中、美亜は再び…テレポートしょうとした。

その時、そいつは現れた。

「!?」

美亜は真後ろに、強い魔力を感じ振り返った。

「チッ!」

そして、すぐに前を向いた。

「舐めてるか!」

目の前に立つ女を睨んだ。

茶色のワンピースを来た女が…微笑みながら立っていた。

背は低い。それに、日本地区に住んでいる民族の顔ではない。

(人のことは…言えないが)

美亜はフッと笑うと、スカートのポケットから白い乙女ケースを取り出した。

(こいつで、様子を見るか)

そのまま、前に突きだすと、

「装着!」

眼鏡ケースから光が溢れた。

そして、美亜は…乙女ホワイトへと変身した。

「フン!」

一瞬で間合いを詰めると、パンチを繰り出した。

「冗談は、やめて下さい」

女は片手で、受け止めた。

しかし、今度は乙女ホワイトの回し蹴りが、女の首筋を狙う。

「!」

乙女ホワイトは、驚いた。

突然、女が消えたからだ。

いや、消えたのではない。

上空に飛び上がったのだ。黒い蝙蝠の羽を広げて。

「お前は!?」

赤い瞳で、自分を見下ろす姿に、美亜は絶句した。そして、頭をかくと、

「なるほどな」

美亜はすべてを悟った。

眼鏡を取ると、変身を解き…もう1つの変身も解いた。

黒髪がブロンドに変わり、背も少し伸びた。

「御姉様!」

その姿を見て、女は嬉しそうな声を上げた。

「御姉様?」

一瞬で、女の前まで移動すると、白い翼を広げた。

「生憎…あたしに、妹はいない!」

「それが…いたんですよ」

女は、悪戯っぽい目を向けると、その目を細め、

「アルテミア…御姉様」

笑顔を作った。