剣司は、痛む肩を押さながら、

「…グレイとは、相討ちに持ち込んだ。だけど、あいつは…俺の刀を奪うと、そのまま走って行った…。いずれ、出血多量で死ぬぞ」

そう言ってから、剣司は肩から手を離すと、ティアナの腕を掴んだ。

「できれば、あいつを助けてやってくれ!こんな形で、終わることは…不本意だ!今…止めれば、あいつは助かる!」

「わかってるわ」

ティアナは頷くと、剣司の腕に手をおき、そっと離した。

「必ず助けるわ。でも、その前に…あなたを」

カードを使い、さらに治療しょうとするティアナに、剣司は首を横に振り、

「あとは…あいつにしてやってくれ。俺は大丈夫だから」

「で、でも…」

「あんたさ」

突然、剣司は真剣な顔になって、じっとティアナを見つめた。

「好きな男はいるのか?」

「は?」

ティアナは、場違いの質問に驚いた。

「お、おかしな質問じゃないだろ?」

少し照れる剣司に、

「男って、そういうこと気にするのね」

ティアナはため息をついた。一気に、緊張が解けた。

「だから、そうじゃなくてさ」

剣司は頭をかき、

「俺は…故郷に好きな女を残している。だから、絶対に死ねないし…絶対に生きて帰る」

「…」

真剣な表情になった剣司の言葉に、ティアナは静かに聞くことにした。

「だから、こんな傷ぐらいで、どうこうならないよ」

剣司は、笑った。

「…そういうものかしら?あたしはただ…ここで死んだら、カードシステムも完成できないから…少なくとも、システムが完成するまでは、死ねないわ」

その言葉に、剣司はティアナの手にあるカードに目を移し、

「大層な理由で…」

痛む方を庇いながら、肩をすくめた。

「そうかな…」

首を傾げるティアナに、剣司は笑った。

「先輩!」

その時、通路の向こうからジャスティンが駆け寄ってきた。

ティアナを見つめながら、笑顔で近付いてくるジャスティンを見て、

「報われないな…」

剣司は呟くように、言った。