「お母様!」

フレアを探す浩也の声が、ジャスティンの耳に飛び込んできた。

「この声は!」

ジャスティンが何かに、気付きかけた時、彼は足を止めた。

「!」

圧倒的な魔力を感じたからだ。

自分でも無意識の内に、ジャスティンは攻撃を仕掛けていた。


「ほう」

無数に分身したブーメランが、空中に突然現れた人物を囲んだ。

「この技…。懐かしいな」

「お前は!?」

空を見上げたジャスティンは、目を見開いた。

空中に現れたのは、アルテミアであった。

アルテミアはゆっくりと、ジャスティンの前に着地した。

右手の人差し指と薬指で、ブーメランを掴みながら。

「久しぶりね」

アルテミアは笑顔を作ると、ジャスティンに向けてブーメランを投げた。

「アルテミア…。今まで、どこに?」

ブーメランは、ジャスティンの右手の甲にくっ付くと、折り畳まれ、服の袖口から中に収まった。

アルテミアは、ジャスティンの質問に答えずに、ただ笑顔で返した。

「…それに、どうしてもここにいる」

ジャスティンの意識は、アルテミアを気にしながらも、遠ざかっていく浩也の気配をとらえていた。

「やはり…」

ジャスティンはアルテミアを見つめ、

「あの子が気になるのか?」

「…」

「あの子は…やはり」

ジャスティンが核心を口にしょうとすると、アルテミアが遮った。

「ジャスティン・ゲイ」

真剣な目で、ジャスティンをじっと見つめた。

透き通ったブルーの瞳が、ジャスティンに向けられていた。

ジャスティンは思わず、息を飲んだ。

アルテミアは、表情を柔和にし、

「あなたに、頼みがあるの」

「頼み?」

ジャスティンは訝しげに、眉を寄せた。

アルテミアは頷き、遠ざかっていく浩也の声が聞こえる方に、顔を向けた。

「あの子に、教えてほしいの。この世界の人間について」

「何?」

「…」

アルテミアははにかみ、

「多分…魔物のことは、わかったと思うの。後は…この世界の人間について、知ってほしい。この世界に、生まれた者として」