「…やはり、完全には斬れなかったか」

一気に温度が、下がっていく洞窟内。

しかし、それでも…ティアナは限界だった。

地面に突き刺さったライトニングソードを、抜くこともできなかった。

不動が消え去る前に、一撃でも放たれていたら…ティアナは死んでいた。

「あたしは…まだまだ…弱い…」

不動がいなくなったことで、真っ暗になった洞窟内で…そのまま、ティアナはライトニングソドの横で崩れ落ちた。





「先輩…?」

剣司の後を追っていたジャスティンは、階段の途中で足を止め、後ろを向いた。

しかし、すぐに前を向くと、階段を駆け上がった。

「大丈夫だ!先輩に限って!それに」

ジャスティンは両手を握り締め、

「俺よりも、先輩はずっと強い!」

そう言ってから、

「うおおっ!」

心に浮かんだ不安を拭い去る為に、ジャスティンはスピードを上げた。



その頃、階段を上がりきった剣司は、腸の中のようなでこぼこの通路を走っていた。

通路はなだらかに、上に向かっていた。

「キキキキ…」

奇声を発しながら、通路の向こうから蜂に似た魔物の大群が向かってきた。

「は!」

剣司は走るスピードを上げ、一気に抜刀した。

一瞬で、三匹の魔物が切り裂かれた。

しかし、数が多い。

突破できないと、舌打ちした時、

「うおおっ!」

雄叫びを上げながら、ジャスティンが剣司に追い付いてきた。

「誰か知らないが!避けろ!」

ジャスティンは、ブーメランを手にすると、蜂に似た魔物の群れに向けて投げつけた。

唸りを上げて、通路を旋回するブーメランは、次々に魔物を切り裂いていく。

「助かったよ」

剣司は振り返り、礼を言うと、ブーメランを避けながら、前へ進んでいく。

「あっ!」

ジャスティンは、戻ってきたブーメランを掴んだ。

ある程度の魔物を倒したが、まだ蜂に似た魔物は大勢残っていた。

仲間をやられたことで、完全にターゲットを、ジャスティンだけに絞ったようだ。