「き、貴様!」

リンネはアルテミアを見上げながら、炎を放とうとしたが、まだ撃てなかった。

「いいか!もう一度言う!あのガキには、手をだすな!だしたら…」

アルテミアは、リンネを見下ろし、

「殺すぞ」

睨み付けた。

「!」

その瞬間、リンネの体に戦慄が走った。

(な、なんという…魔力!?)

明らかに、力が上がっていた。

それに、射ぬくような瞳の冷たさは、魔王ライを思わせた。


(や、やはり…魔王の娘…)

知らぬ間に、畏縮してしまったリンネを睨みながら、アルテミアは上昇すると、森を突き抜け、一気に見えなくなった。



「く!」

リンネは唇を噛み締めながら、崩れ落ちた。

片膝を付き、何とか倒れることは防いだが、全身に汗が滲んでいた。

「汗だと?」

リンネは、自分の変化に笑った。

汗といい、涙といい…こんなにも、自分が弱い存在とは思ってもみなかった。

「フフフ…」

自然と声が出た。


「ハハハハハハハハ!」

大声を出して笑う頃には、リンネの体に炎が戻ってきた。


ひとしきり笑った後、リンネは虚空を睨んだ。

「わかったわ!今回はあなたの言う通りにしてあげる!」

リンネの全身を炎が包む。

「いずれ…魔王が復活なさった時、お前と!お前達の愛しい男を!」

リンネは拳を突きだし、握り締めた。

「この手で、殺して上げる!」

流した汗も、流れた涙も…すべてが、蒸発した。