「く、くそ」

流した涙を拭う力もなかった。

それどころか…自分の体が急激に冷えていくのがわかった。

「アイリ!ユウリ!」

2人の従者を呼んだが、現れない。

「く!炎が消えた為、実体化できないのか!」

どうやら、シャイニングソードに力を吸い取られただけでなく、リンネの弱点であるコアを傷付けられたようだ。

このままにしておけば、リンネは死んでしまう。

「こ、こんな形で…」

リンネは口惜しかった。

自分の涙を知り、フレアの正体を知った今からが、真の戦いの幕開けだからだ。

「ライ様…が復活なさる前に、やらねばならぬことができたのに…」

リンネの体に、微かに残っていた命の炎も消えようとしていた。



その時、体に温かさが戻った。

「何!?」

気を失いかけていたリンネは、目を見開いた。

「ど、どうなっているの?」

急激に、熱が戻ってきている。



「かりは返したぞ」

頭上から聞こえる声に、 リンネは顔を上げた。

木々の隙間から零れる光が、逆光になってしまい、表情はわからなかったが、翼を広げた天使が浮かんでいた。

顔がわからずともその声で、相手が誰であるか理解できた。

苦々しく、リンネはその天使の名を口にした。

「アルテミア!」



「フッ」

口許に不敵な笑みを浮かべながら、アルテミアはリンネの前に着地した。

「あんたがどうして、あたしを!」

リンネは立ち上がったが、まだ足元がふらついていた。

そんなリンネを顎を上げて見下しながら、アルテミアはこたえた。

「お前は昔、赤星を助けたことがあったからな。そのかりを返しただけだ」


「何いい!」

自分に救われた屈辱に震えるリンネを見て、 アルテミアは鼻を鳴らした。

「フン」

そして、再び空中に舞い上がった。

「心配するな!助けるのは、今回だけだ!」

白い翼を広げ、

「それともう一つ!お前に、忠告しておく!今さっきのガキには手を出すな!」