ギラを苛立ちが拳に伝わり、回廊の壁を抉った。


「それが、どうした?」

再び壁を叩こうとしたギラの前に、腕を組んだサラがいた。

赤髪に二本の角を生やしたサラは、ため息をついた。

「アルテミア様は、もう立派な戦士。あの方は、自分で今の立場を選ばれた。自らの父上である魔王と戦う道を選ばれたのだ」

「ううう…」

サラの言葉に、ギラは言い返せない。

「その選択を否定はできない。そして、我々は…ライ様の刃として、アルテミア様を迎え討つだけだ」

サラは、ギラを睨んだ。

「そ、それくらいわかっておるわ!」

ギラは顔をしかめると、サラを見ないで歩き出した。

「まったく…。あやつには、情というものがないのか…」

毒づきながらも、ギラは頭をかき、苛つきを抑えようとしていた。

そんなギラの背中をしばし見送った後、サラも歩き出した。

ギラと同じ方向へ。







「皆さん。久しぶりね」

カイオウ、ギラ…そして、サラが向かった場所は、玉座の間であった。

普段は、闇より暗い部屋に、灯りが点っていた。

丁度真ん中にある玉座の横に座ることなく、佇んでいるのは、リンネであった。

リンネは、三人が玉座の間に姿を見せると、微笑みをつくった。

「フン」

ギラは鼻を鳴らすと、そんなリンネを睨んだ。

魔王不在の中、魔物達を支配するのは、ここにいる4人の魔神だった。

「揃ったようじゃな」

玉座の後ろから、ライの側近である蛙男が姿を見せたが、リンネが手を伸ばして遮った。

リンネが蛙男に視線をやると、蛙男は慌て出し…やがて口をつむんだ。

そんな蛙男から視線を外すと、リンネは再び笑みをつくり、三人の魔神に顔を向けた。

「今日、集まってもらったのは他でもないの。ライ様不在の中、今の魔王軍をどうしていくのか。今後のことを話し合いたいと思ったからよ」

リンネの言葉に、ギラがキレた。

「何を今更…。ライ様が封印されて、何ヵ月経ったと思っているんだ」

ギラの怒りに呼応して、額から伸びた角から電気が発生した。