「ありがとう…」

一応礼を述べると、ジャスティンはクラークから離れた。

「別に…いいよ」

クラークも治癒に使ったカードを、慌てて胸ポケットにいれると、ジャスティンから顔を逸らした。

変な空気が流れる中、2人は仲直りをする暇もなく、気持ちを切り替えなければならなくなった。

「!」

耳障りな羽音が、砦の方から聞こえた。顔を上げたクラークの目に、蜂に似た魔物が再び大群で、向かってくる様子が映った。

「来たか」

空を見ているクラークと違い、草木を踏み潰す足音に、ジャスティンは前方の茂みを睨んだ。

「もおお!」

牛のような奇声を発しながら、斧を持った魔物が茂みを掻き分けて、姿を見せた。牛の頭を持ったミノタウルスだ。

「うるさい!」

登場と同時に、ジャスティンの飛び蹴りがミノタウルスのこめかみにヒットした。

「ウモオオ!」

横にふっ飛んだミノタウルスとは別の個体が、茂みの向こうから飛び出してきた。

「チッ!」

ジャスティンは舌打ちした。空中にいる為に、避けない。自分に二本の角を向けて突進してくるミノタウルス。

「ジャスティン!」

クラークが影切りをやろうと、長剣を抜いた時、茂みの向こうから次々とミノタウルスが飛び出してきた。

「舐めるな!」

ジャスティンは、向かってた二本の角を両手で掴むと、空中で膝を曲げ、ミノタウルスの眉間に突き刺した。

「ウモオオ!」

悲鳴を上げるミノタウルスが倒れで、地面につく前に、ジャスティンはミノタウルスの顔を蹴ると、角を利用してバク転した。

そして、倒れたミノタウルスの背中に着地すると、勢いを止めることなく、突進してくるミノタウルスの鳩尾に肘を突き立てた。

「きりがない!」

影切りは効率がよいとは言え、ミノタウルスの巨体をすり抜けながら、切っていく行為は…確実に、クラークの体力を消耗させた。

そんな時、頭上の太陽が雲で隠された。

影が薄くなった。

「仕方ない」

クラークは、カードを取り出した。