元老院の紋章である林檎に絡み付いた蛇の刻印が、押されていた。

「俺は…」

剣司は日本刀を鞘に納めてから、

「そんな紙切れより…こいつが分かりやすいだろ」

スーツの内ポケットから、二枚のカードを取り出した。

「こいつが、送られてきた」

一枚は、魔力が空になっていた。

「こいつを使い、数回テレポートしてここまで来た」

剣司は、空になったカードを見つめ、

「最初は驚いたぜ。なぜなら…魔法が使えるからな。このカードと一緒に同封してあった紙に、テレポートの仕方が書いてあった。一度使うだけで、日本から東シナ海の孤島に、テレポートした。それから、数回テレポートしたら、ここに来た」

剣司は、洞窟を指差した。

(テレポートする場所が、プログラムされている?)

ティアナは、剣司が持っているカードを見た。自分が持っているのと、タイプが違う。

(次世代タイプか)

作っているとしたら、ランがいるメキドのアレキサンダーのところだろう。

その近くで、カードシステムの要となる地下の巨大倉庫が建築されていた。

ティアナには報告されなかったが、その建築に関わった人々は完成後に、全員始末されることになっていた。

剣司は空になったカードを、ティアナに投げた。

「こいつは、もう使えないからな」

カードを受け取ったティアナは、剣司を見た。

(魔力をチャージできることを知らない?)

その事実から言って、剣司に渡した相手は、ここに来させることだけを目的にしていたことがわかった。

(もう一枚は、暗殺用か。それに…中継地のような場所も作られている)

自分の知らないところで、着々とカードシステムが出来上がっていることを知った。

ティアナはカードを握り締めた。

(だけど…今は、そんなことよりも…)

ティアナは、剣司を横目で見た。

(この人に、依頼された意味は何?)

そして、ゆっくりとグレイに視線を移した。

(この人は…一体)

ティアナは、グレイが時折見せる…悲しい背中を思い出していた。